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大笑いできる小説本「空中ブランコ」 [本]

 久々に大笑いできる小説本に出会いました。奥田英朗著、「空中ブランコ」です。
 僕はオーディオブックで購入しました。

 

飛べなくなった空中ブランコ乗り。
尖ったものが苦手な先端恐怖症のヤクザ。
義父である教授のヅラをはがしたくなる医師。
ボールが投げられなくなったプロ野球選手。
過去に書いた小説と同じ小説を書いてしまうのではないかと、気に病む女流作家。

 それぞれの登場人物たちは、自分がどこかおかしいのではないかと思って伊良部総合病院の神経科のドアを叩きます。しかしそこにはそんな患者たちよりもっとおかしい精神科医、伊良部がいるのです。


 とんでもなく変な精神科医を中心とした患者たちの5つの物語。どれも本当におもしろい。特に、無意識に義父のかつらを取りたくなってしまう強迫神経症の医師の話「義父のヅラ」は、聞きながら、ワーワーギャーギャー叫んでしまいました。だって、大学で権力を持つ義父のかつらを、公衆の面前でとってしまったら、今の地位も名誉も家庭も全部パーになってしまうんですよ。笑いあり、ドキドキあり、冷や冷やするところありで、本当に聞かせてくれます。

 それは、精神科医の伊良部の強烈な個性もあるし、それに振り回され、戸惑いながらも、指示に従っていく登場人物のおもしろさ。更に病が治っていく成長!?のおもしろさもあります。
 小説本で、これだけ心が躍り、笑った本ってあったでしょうか。

 全体的に5人の患者さんのストーリーを通して感じたことがありました。それは、悩みは自分で作っているんだなってこと。
 悩みは本人にとって深刻なものばかりですが、その根本の原因は自分にあるってことです。

 しかし破天荒で非常識な医師、伊良部との出会いによって、小さな自分の中の枠は揺すぶられ、壊されていきます。そして、状況はな~んにも変わらないのに、出てくる5人の人たちは、次々に晴れ晴れとした気分に変わっていきます。

 自分の作った枠の中で生きている限り、状況は変わらないということを教えてくれます。また、人は出会いによって、変わるんだってことも教えてくれます。
 いろんな人との出会い、価値観との出会いが、自分の枠を広げます。それが人間の大きさなのかもしれません。そして自分が大きくなればなるほど、悩みが悩みでなくなっていくのかもしれません。

 笑いながら聞いているうちに、あれっ、自分の悩みもたいしたことないな!って、そんな気分にさせる不思議な本です。お勧めです。

空中ブランコ (文春文庫)

空中ブランコ (文春文庫)

  • 作者: 奥田 英朗
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/01/10
  • メディア: 文庫

 

 この本は、「イン・ザ・プール」という本の続編だそうです。さっそく先の本も購入しようと思っています。

イン・ザ・プール 倍速版

 

 ゲラゲラ笑いながら走っている僕を見た人は、変な人だと思ったでしょうね。


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